#18 意識

なぜ、この自分なのか、と思う時がある。

人と話しているとき、メシを食っているとき、スーパーのレジに並んでいるとき、日常のふとした隙間に、なぜ自分は、「この」自分なのだろう、と思われてくる時がある。

日本の、田舎町の、地方公務員の家の四人兄弟の末の子として生まれたという私の生い立ちは、いつ設定されたのかと、まじめに考えてみたりする。

そんなとき、なんとなくだが、意識と体を別々に感じたりすることがある。
体は辻内某のままだが、意識は「誰でもない」という感覚。
また「誰であってもいい」という感覚。
自分のものではない記憶が一瞬よぎる感覚。

脳内現象にすぎないのだろうが、へんにリアルだったりする。

何らかの精神疾患なのかと思わなくもないが、一応、客観性は保っている。
気分としてもマイナスのものではなく、なにか広々とした解放感を感じる。
個体ではなく、気体に近い感覚である。

全ての場所に同時に居るかのような感覚。
こうしていることのわけが一望に見渡せる場所に居るかのような感覚。

あの風のような感覚。

あれが死というものならいいな、と思ったりする。