細く開けた窓に
夏の青空が見える
遥か南の海には台風がいて
道に迷っている
これから何処へ向かうのか知らないが
何処へいっても歓迎されないきみは
かわいそうだね
第16回太宰治賞受賞作家 小説家・シンガーソングライター
近くの高原に友人とススキを見に行った。
毎年この時期になんとなく訪れる場所である。
とくに何があるという訳でもないが、小高い丘に上がると、山に囲まれた名も知らぬ村が見下ろせ、その斜面に無数のススキが風に揺れている、そんな風景を、この時期、なぜかふと見たくなる。
とくに時間を見計らって出掛けた訳ではなかったが、着くと、ちょうど山に陽が沈みかけている、そんな時間だった。
黄金色の夕日に染められて、ススキが波うつように揺れていた。
煙草に火をつけ、しばらくのあいだ、そんな風景をぼんやりと見ていた。
古い流行歌などで、ススキは儚(はかな)いものの象徴のように歌われたりするが、そして見ていると、確かに、風に弄ばれて揺れるススキは、いかにも弱く儚いものに見えたりもするが、
しかしこれが強さなのではないかと、風のなかでそんなことを思った。
風に吹かれるまま揺れるススキは、揺れることで、けして折れることはない。
風に立ちはだかることも、風を拒むこともなく、許された時間を、ただ、揺れつづけて生きている。
この強さが、俺には無かったな、
短くなった煙草を口にはこびながら、思った。
この歌は、21歳の頃につくった歌であります。
デザイン学校に通いながら、ファミレスのウェイターのバイトをやっていた頃のことであります。
その頃つきあっていたコの、湯上がりのスッピンの顔を見たとき、あ、イイナアと思い、そのイメージでつくりました。
その後、某レコード会社からデビューする事になったとき、この歌をデビュー曲に、という話も出るなか、「地味過ぎる」ということでお蔵入りになった歌です。ちなみに、その後決まったデビュー曲は、もっと地味でした。
それから四十数年が経ちますが、その間、この歌は折りにつけ、ずっと歌ってきた歌であります。
ライブハウスで、イベントホールで、市民会館で、わけのわからん温泉ホテルの演芸場で、あそこで、ここで、と、ずっと私と付き合ってきた歌であります。
過ぎていった一場面、一場面を、この歌を歌う度に思うのであります。
と、そーゆーわけで「オールアローン」、歌い直してみマシタ。
こないだ起きぬけに歌ったやつは、歌詞をトばしていたのに気がついたので。
べつに誰が気にとめるわけでもないでしょうが、本人的にちゃんと歌っておきたかったもので。はい。
いやー、しかし、このブログもだらだらやっているうちに気がつけば#99まで来ましたね。
ちょうど一年くらいかな。
100まではやりたいと思っていたので、これでなんとか届きそうです。
べつに100でハイ、おわり、という訳でもないですが、私もイロイロ限界に来ている所がありまして、ま、それはいいですが、とりあえず100、いけそうでヨカッタ、ということであります。
最初の頃、#1から#80あたりまでは、物書き魂フル稼働で、「人間」というもの、或いは「人生」というもの、その人間が人生を紡いでいるこの「宇宙」というもの、そうした事を、けっこう真面目に、考え、考え、書いてきたつもりですが、6月頃にYouTube始めてからは、歌中心になってしまいました。
ま、根がシンガーですので、カンベンを。
「オールアローン」、好きな歌です。
#97で東京でのバンド時代に触れたせいか、なんとなくこの歌も続けてここに上げたくなった。
二週間ほど前につくった歌である。
曲をつくるのは早いほうだと思うが、この歌は、まるで呼吸をひとつするように数分で出来た。テキトーと言えばテキトーであるが、聴いていると自分の二十代三十代の頃のふわふわした楽しさが思い出されて、珍しく自分で再生して聴き返したりしている。
サイコーの恋と、サイコーの仲間と、サイコーの青空の下でサイコーの夢をみた、そんな頃だったと思っている。脳内記憶美化装置がかなりハタライているのかも知れないが、なんにせよ、大切な懐かしさではある。
けっきょく僕達は、ジョン・レノンにもエルビスにもなれなかったが、ジョン・レノンもエルビスも、僕達にはなれなかった。
誰も誰かになる必要はない。
そういうことなんだろうと思う。
博多の盛り場を流れる那珂川という川があります。
若い頃、バンド仲間とよく行き来した川であります。
それから四十年という時が流れ、ふと夜の那珂川を目にしたときに、つくった歌であります。
*
今夜の 涙は
街の風に 捨てちまいなよ
夜明けが また来る
あのビルの 向こうから
生きることは 数えること
幸せ 不幸せを 数えながら
両手いっぱいの夜明け
抱いて 帰ろう
誰かの 残した
夢のかけら 幾つも
ネオンの映る川に
あてもなく 揺れてる
明日のことを 尋ねても
応える人も居ない この街で
小さな肩を寄せあい
せめて歩こう
生きることは 数えること
幸せ 不幸せを 数えながら
両手いっぱいの夜明け
抱いて 帰ろう