#2 日テレ

この時期イオンモールで買い物をしていると、例の〈愛は地球を救う〉というテレビ番組の宣伝が盛んに聞こえてくる。どこの売り場に居ても、加山さん歌うところのあの歌が流れ、それにかぶせて、「今年もいよいよこの季節となりましたあ!」ジャーン!と女性がハイトーンで繰り返している。

〈愛は地球を救う〉。
毎年このフレーズを耳にするたびに、いいようのない脱力感をおぼえる。

なんて思い上がった…

そう思う。

これがたとえば、(神の)愛が地球を救う、というのであれば、まだ解る。共感するしないはともかく、そういう主張があってもいい。
だがここで言われている地球を救う〈愛〉なるものは、神の愛でも、仏の愛でもなく、〈人間〉の〈愛〉のことらしい。〈わたしたち人間〉の〈愛〉が地球を〈救う〉と言っているのらしい。つまり、わたしたちが地球を救う、とそう言っているのらしい。

馬鹿じゃなかろか。

と思う。
人間などに救ってもらわなくても、地球は五十億年前から悠然とここに在るし、〈わたしたち〉が滅び去った後も、やはり地球は悠然とここに浮かんでいる。太陽が内部崩壊を起こし惑星達を灼き尽くす四十数億年後といわれる時まで、地球はここに在りつづける。地球の表皮にへばりついている寄生虫のごとき人間が何を恩着せがましいことをゆーとるか、と感じる。しかもいまや我々は地球にとって有害な寄生虫ですらある。

思うのだが、あの番組のスポンサーはその企業活動のなかで、微塵も地球を傷つけてはいないのだろうか。高らかにテーマ曲を歌う加山さんは、あの豪華な船で微塵も海を汚してこなかったのだろうか。そんな筈はないだろうと思う。。しかしそれは、べつにいい。企業は利益を上げなければなるまいし、加山さんにも悪意はない。俺も皆も大なり小なり地球を傷つけながら生きている。他の犠牲なしに生命は存在し得ない。
地球もそのことはよく解っている。だから、全ての生命に対して全身を提供してくれてきた。動物も植物も地球から必要なものだけを享受して生きてきた。人間だけが、いつからか、度を越して地球を貪りはじめた。「困った奴らだ」いま地球は思っている。そんななかで、地球を困らせてる張本人たる人間が、

〈愛は地球を救う〉

とか言っている。
聞いてて私はとても恥ずかしい。やっているほうは恥ずかしくないのだろうか。毛ガニの足のような神経をしておられるのだろうか。地球を救うまえに、ご自分を救ったほうがいいのではあるまいか。