#88 「イッツオールライト」


フォスターという作曲家がいる。
19世紀の人である。
「オールド・ブラック・ジョー」「故郷の人々」など多くの美しい曲を書き、一時は持て囃されたこの人も、やがてガーシュインなどが台頭してくるなか、飽きられ、落ちぶれて、最後はその日を凌ぐ金もない困窮のなか、ニューヨークの安宿で一人ひっそりと死んでいったらしい。37歳の若さだった。
彼が死んだ時、その場末の安宿のベッドの枕元に、今も世界中で愛されている「ビューティフルドリーマー・夢見る人」というあの美しい曲の楽譜が置いてあったという。この話を昔ラジオで聴いた時、私は涙がでた。 世の中というものは随分理不尽なものだと思ったりしたが、今はすこしちがって、人生というのはそういうものなんだろう、とそんな風にも感じる。

フォスターに捧ぐ、というのではないが、どこかでそんなフォスターの一生を重ねつつこの歌をつくった。