#71 桜

暖かな陽の差す春の午後、
なんだか意味もなく幸せな気分で、ぼんやり町を眺めている。
この二週間ほどのあいだ町を彩りつづけた桜たちが、いまはもう、ハラハラと散り始めている。
ごくろうであった、とエラそーに桜たちをねぎらいながら、窓辺でひとつの春を見送っている。

こないだ、このブログの管理人のA君と熊本の温泉に行き、その帰りに通った名も知らぬ町で、たまたま桜祭りなるものをやっていて、いい夜桜を見させて貰った。 桜というのはこんなに匂うのか思うほど、山いっぱいに桜が咲きこぼれていた。

桜に纏わる記憶はいろいろあるが、やはり思い出されるのは、入学式、卒業式、だろう。
と書いてふと思ったが、卒業式と入学式との間にはひと月近い時間が有るように思うのだが、そんなに長く桜が咲きつづけていたとも思えないので、このへんは記憶が自己装飾しているのかも知れない。 まあ、どうでもいい。
私には確かに、桜に迎えられて入学し、桜に見送られて卒業した、そんな記憶が勝手に有る。
ああそうだ、私は縁あって母校の校歌を書かせて貰った者である。
小中一貫校となるのを機に校歌の歌詞を新しいものにしたいということで、話が来た。
わが古里の子供逹は、この春、私の贈った言葉を歌ってくれたのだろうか。
幸せなことである。

*